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  • 2019/05/16 掲載

エキスパート向け文書も対応、AIが「知のサイクル」を迅速に回す

連載:中西 崇文のAI未来論

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人間に代わって数多くの業務を遂行できるとして注目されているAI(人工知能)。技術の進化によって、文書に対する理解力や読解力が求められる業務にも活用されるケースが増えてきた。たとえば、契約書のように重要な書類をレビューするAIサービスも登場し始めた。

武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科長 准教授 中西 崇文

武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科長 准教授 中西 崇文

武蔵野大学 准教授、国際大学GLOCOM主任研究員
1978年、三重県伊勢市生まれ。2006年3月、筑波大学大学院システム情報工学研究科にて博士(工学)の学位取得。2006年より情報通信研究機構研究員。ナレッジクラスタシステムの研究開発、大規模データ分析・可視化手法に関する研究開発等に従事。2014年より国際大学GLOCOM准教授・主任研究員。データマイニング、ビッグデータ分析、分脈構造化分析の研究に従事。2019年から武蔵野大学 データサイエンス学部 データサイエンス学科長 准教授。国際大学GLOCOM主任研究員、デジタルハリウッド大学大学院客員教授。専門は、データマイニング、ビッグデータ分析システム、統合データベース、感性情報処理、メディアコンテンツ分析など。

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AIが人間のように文章理解する日は来るのだろうか
(Photo/Getty Images)

暗黙知から形式知を生み出す「知のサイクル」をAIが支援

 ビジネスの現場では、多様な文書の内容を正確に理解し、適切な処理することが必須だ。文書をどれだけ迅速に把握し、正確にタスクをこなしていくかが重要なのだ。

 一方、人間の認知機能にも限界がある。それを助けてくれるのもAIである。たとえば、文書中に今後ビジネスを進める上でのリスクが潜んでいた場合、それを分かりやすくAIがアラートを出してくれれば、私たちの業務の負荷も軽くなり、より迅速に作業を進められるだろう。

 こうしたAI技術により、「暗黙知から形式知を生み出す知のサイクル」を迅速に回すことを可能になる。具体的にAIにより「知のサイクル高速回転させる」ための過程を見ていくことにしよう。

契約書に潜むリスクを瞬時で示すAIサービスが登場

 ビジネスの文書、特に契約書に着目し、その内容を解析することで、契約書内のリスクをレビューしてくれるAIサービスがある。この4月、LegalForce社が提供を開始した契約書レビュー支援ソフトウェアの「LegalForce」である。

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AIを搭載した契約書レビュー支援ソフトウェア「LegalForce」の自動レビュー機能
(出典:LegalForce)


 自然言語処理を用いたAIを搭載したLegalForceは、アップロードされた契約書を対象として、わずか1秒で不利な条文や欠落条項を指摘する。また、これらの条文・条項の修正のための参考条文例もリアルタイムに検索し、提示することも可能だ。さらに、これまで同社で交わしてきた契約書の情報を蓄積しており、これらを瞬時に検索したり、参照したりすることもできる。

 こうした機能により、契約書に潜むリスクを瞬時に把握し、その見落としを防ぐことを可能にする。LegalForceを導入することで、「契約書を確認する」「修正する」「協議する」という作業の負荷を軽くし、迅速化を図ることができる。

 契約書などの文書は専門用語も多く、読み込むことが不得意という人もいるだろう。しかし、ビジネスを進めるためには、契約書を作り、契約を結ぶということは必須の作業だ。さらに、契約書は、相手があることであり、一つひとつの条項、条文をどのように合意をするか、どのように譲歩するかを検討段階において、自社のビジネスのリスクが入り込む余地が高い文書だ。

 場合によっては、複数の人で確認することも必要だろう。その確認が人間のみではなく、AIがサポートすることができれば確実性がより増すことになるだろう。

 LegalForceでレビュー対象となるのは、業務委託契約などの13種類の契約書に限られているが、より多くの文書に応用されているものと期待される。また、同サービスは契約書に限定しているが、今後は文書の種類ごと、もしくは分野ごとに文書レビューを支援するAIサービスが登場することも考えられる。

専門性の高い文書読解をサポートし「能力差」を埋める

 ビジネスの現場では、契約書以外にもさまざまな文書が散在している。中には、特定分野の専門性を有しているエキスパートである担当者のみが、文書を作成したり、記述内容を理解したりして業務を遂行できるものも存在するだろう。

 そうした状況では、担当者の業務が忙しくなった際、新たな人材をすぐに投入しようと思っても難しいことがある。業務を遂行するために必要なスキルや経験について、ある程度の学習期間が必要となるからだ。専門用語が多い文書の意味が伝わり辛いのは当然だろう。

 そこで、文書を読み解くガイドのような機能が備わっていればどうだろうか。専門性の高い文書の読解をAIが補助できたら、経験の少ない人材が業務をこなす上で非常に大きなサポートとなるだろう。担当者の能力差をAIで埋めるということだ。

 このあたりの機能は、断片的であるが、現在でも少しずつ実現されつつある。次ページで確認しよう。

【次ページ】“AI×ドキュメント技術”を採用する意味

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