海外レポートから学ぶ!AIをビジネスにどのように組み込むべきか?

海外レポートから学ぶ!AIをビジネスにどのように組み込むべきか?

 近年AIはひとつのホットトピックとして、連日メディアで取り上げられています。AI関連のニュースをみない日のほうが珍しいといえるでしょう。しかし、ビジネスの現場において、実際のツールとしてAIはまだ馴染みのあるものとは言い難いのも事実でしょう。それではAIはどのように既存のビジネスのなかに組み込むべきなのでしょうか。
 今回は、日本よりもAIの取り組みが進んでいる米国の最新コラムや記事を参考に企業がAIを導入するさいの要点をまとめてみました。

AIは実際にはどのように使われるのか

 まず、企業において実際にAIはどのように使われるのが一般的なのでしょうか。「9 Ways AI Is Already Being Used in the Enterprise」(CMS WiRE 2020/04/14)では、おおよそ以下の9項目で一般的に利用されていると伝えています。

1. 情報の分類と整理
2. カスタマーサービスの向上
3. セキュリティとガバナンスの確保
4. プロセスとワークフローの自動化
5. AIを用いた人材採用、管理
6. 保険(データの集約/データ管理/結果を予測する/何千ものイベントを監視/レポートの自動化)の適切化
7. 顧客へのメッセージング
8. CRM(Customer Relationship Management)
9. プライバシーの保護
 
 自社内部の問題を解決するものから、顧客に向けたものまで様々な形でAIがすでに一般的に利用されています。この9項目に関連することで、導入を検討したことがあるという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。またすでに導入したというケースもあるかとおもいます。しかしAIにおける技術は驚くスピードで日々進歩しています。例えば、数年前圧倒的にトップだった将棋のAIでも、最新の技術を搭載したAIに勝つことはほぼありえません。このように一度導入したとしても最低でも半年単位での見直しが必要ともいえます。

企業がAIを利用する上で得られるもの

 特にビッグデータといわれる莫大な顧客情報をどのように利用するのか、は企業にとって重要な問題になっているといえるでしょう。顧客のニーズが多様化している現代において、詳細に顧客のニーズを適切に把握するためにAIは欠かせないツールであるといえるでしょう。顧客のペルソナを正確に把握することができることこそ、AIをビジネス上で利用するうえでの大きなメリットであると、「10 Ways AI Can Improve Digital Transformation’s Success Rate」(Forbes 2020/04/15)では説いています。顧客のペルソナを適切に把握し、顧客体験の向上を測ることが現代のビジネスでは一般的です。ペルソナ開発のためのAIの最も高度な使用法は、ブランド、イベント、製品の設定、位置データ、表示されたコンテンツ、トランザクション履歴、そして何よりもチャネルと通信の設定を組み合わせたものであるといいます。チャネルごとにキャンペーンへの購入決定を追跡し、特定のペルソナが購入したのに他のペルソナが購入しなかった理由を理解できるようにすることで、マーケティングと販売の効率の分野で成果をだすことができます。AIを含む予測モデルは、理想的な顧客プロファイルをより適切に予測できます。AIベースのアルゴリズムは、ペルソナによって傾向モデルを作成することを可能にし、バンドルまたは価格設定オファーに基づいて行動する顧客を予測するために非常に貴重であることが指摘されています。そのうえで、更に顧客体験の向上をAIを利用して適切に図るためには、顧客の体験をデジタル的に変換することが必要となります。この顧客体験をデジタル化するということが、新しいテクノロジーやビジネスプロセスへの投資の基礎となる必要があると伝えています。またAIベースの予測アルゴリズムで強化された追跡とトレーサビリティは、COVID-19以降の世界でなくてはならないものになっていくと同記事では予想しています。
 

AIを導入する企業が失敗する原因

 上記でみたようにAIを導入することのメリットは明らかです。しかし、AIの導入を試みる企業は多くいますが、それにもかかわらず実際にAIの導入によって大きな利益をだすことに成功しているといえる企業は多くありません。多くの企業が導入において失敗する理由を「The DNA of AI Success: What It Looks Like and How to Get It」(EnterpriseAI 2020/04/16)と「A Radical Solution to Scale AI Technology」(Harvard Business Revie 2020/04/13)
では共通の理由を示しています。
 それはAIを導入する際に、小さなプロジェクト単位で導入してしまうということです。このことは一見多くのこれまでの企業のやり方では自然にみえてしまいますが、AIを用いたビジネスにおいては致命的な問題になることを両記事は指摘しています。AIを使用する場合、通常、小規模から始めることは、多くの企業において小さいもしくは負のROIを維持することを意味しているとEnterpriseAIの記事では指摘されています。AIは、ポイントソリューションを探すための戦術的なツールではなく、Cスイートから基幹業務、ITまで、サイロフリーの組織全体の取り組みを必要とする戦略的テクノロジーです。これより小さいと、プロジェクトが失敗となり無駄に終わると同記では主張しています。
 逆にAIの導入に成功する企業の多くははじめからAIを自らの企業のコアに近づける試みをしていることも紹介されています。AIの導入がまだ形成段階にある場合でも、「積極的な規模の計画」が割り当てられた幹部を編成することにより、最初からビジネスを推進するAIをビジネス全体に織り込むというビジョンを植え付ける必要があります。逆にそうでない場合、AIが仮に小規模で成功したとしても、全体に統合する際に大きな障壁にぶつかると言います。大きな障壁とは、AIがビジネスプロセスに統合されたときに生じる混乱のことであり、上級幹部、部門マネージャー、およびデータサイエンティストがAIによってもたらされる不確実性と混乱を共同で解決する場合にのみ対処できる問題を指しています。また同記事ではAIを利用する際には自社全体の反映するAIのビジョンに基づいたオンプレミスインフラストラクチャーの構築を推奨しています。自らの技術に適切なインフラをAIのインフラストラクチャとアイデアを外部に分散させる組織組織は、この高成長の収益グループに属する可能性が実際には250%低くなったと指摘しています。
 Harvard Business Review(HBR)の記事でも同様のことが述べられています。HBRが12か国の16業界の1,500名の経営幹部を調査した結果、小規模の展開では失敗し企業スケールに合わせた展開が必要であるというソリューションに到達しています。HBRによると、84%が戦略的成長目標を達成するためにビジネス全体でAIをスケーリングする必要があることを知っている一方で、実際にAIの導入が実験段階を超えたのは16%だけであるといいます。そして明らかになったのは、AI導入に成功している企業の多くは、AIの導入実験を放棄しているということです。実験を放棄し初めから適切な企業スケールで導入した企業は、2倍のスケーリングを試み、2倍のスケーリングイニシアチブで成功したことが調査でわかったとHBRでは指摘しています。成功するケースの特徴は、すでに正確なデータの基礎があり、才能ある組織的かつ倫理的なフレームワークがすでにある企業が、初めから企業全体の規模で利用を開始する場合であるとしています。
 

AIを導入するうえでの注意点 

 このようにAIを適切に自社ビジネス全体に利用することは大きなメリットを生むことが明らかになっています。しかし、その一方で、AIの利用には注意すべき点があることも事実です。「AI Still Thinks More Than It Knows: Three Marketing Missteps To Avoid」(Forbes 2020/04/15)ではAIを導入する際に注意すべき3点をあげています。
1. AIを顧客対応に利用することにはメリットがあるが、業界やビジネスモデルを理解しているわけではないということ
2. AIを活用したプラットフォームの利益が実際には自分たちの本業の邪魔になるようなことがあること
3. AIを利用していることで、クリエイティブ・プロセスに力を入れない口実にすること
 AIとは強力なツールであると一方、ツールに過ぎないということを忘れてはいけないということです。例えば、AIの良さは人間のバイアスを排除して、人間には見えていない傾向をとらえることができることです。しかし、AIが基づくデータそのものが局所的なものであったり誤りがあれば、とらえられた傾向も当然局所的なものであったり、誤りとなります。AIもほかのツール同様、適切な関係(不信でも依存でもない)で慎重に利用することが求められています。
 またAIを企業側が利用することに積極的でも、AIに対する消費者心理は異なる場合があることもあります。SmartBrief 2020/04/15「What do consumers think about artificial intelligence?」では、AIに対する消費者心理を扱っています。同記事によると多くの消費者はAIが何であるか、または何であるかを知らないということが明らかになっています。調査回答者の約43%が、AIとは何か、現在どのように採用されているのか正確にはわからないと報告しています。消費者はAIで動く未来に少なからず警戒していることも明らかになっています。同記事ではAIに対して、回答者の34%がAIプログラムが不注意で誰かを傷つけたり殺したりするのではないかと懸念していると述べました。また32%は、AIが最終的にすべての仕事を置き換え、それが消費者経済に劇的な影響を与えると心配しています。ただし回答者の大多数は、AIの展開ペースについて肯定的または中立的であることも明らかになっています。ただし、それでも消費者は人間味を求めていることは明らかになっています。
例えばAI医師よりも人間の医師の診断を87%の人は信頼するだろうと報告しています。消費者は依然として、ブランドがAIロールアウトを管理する際に注意しなければならないという懸念を抱いていることが明らかになっているということです。

まとめ

 以上、みてきたようにAIの導入は既存の企業においては多かれ少なかれ避けられない選択肢になっていることは明らかです。AIがもたらす事業改善の効果は適切に行われた場合、大きなものとなります。その一方で、多くの企業がAIという存在に試行錯誤していることも明らかになっています。そのために小規模に試したいということが逆に失敗を生み出しているというのはAI導入に関する大きな教訓ではないでしょうか。既存のビジネスとAIの関係性を適切に把握しどのように組み込むかをきちんと計画した上で、全体に対して統合的にAIを組み込まないといけないということは大きなハードルです。しかし、そうした企業全体が大きく変貌することを見越した取り組みが求められているのではないでしょうか。
 

参考記事

9 Ways AI Is Already Being Used in the Enterprise
https://www.cmswire.com/digital-workplace/9-ways-ai-is-already-being-used-in-the-enterprise/
(CMS WiRE 2020/04/14)

10 Ways AI Can Improve Digital Transformation’s Success Rate
https://www.forbes.com/sites/louiscolumbus/2020/04/15/10-ways-ai-can-improve-digital-transformations-success-rate/#5160782f5c43
(Forbes 2020/04/15)

The DNA of AI Success: What It Looks Like and How to Get It
https://www.enterpriseai.news/2020/04/16/the-dna-of-ai-success-some-companies-have-it-most-dont/
(EnterpriseAI 2020/04/16)

A Radical Solution to Scale AI Technology
https://hbr.org/2020/04/a-radical-solution-to-scale-ai-technology
(HBR 2020/04/13)

AI Still Thinks More Than It Knows: Three Marketing Missteps To Avoid
https://www.forbes.com/sites/forbescommunicationscouncil/2020/04/15/ai-still-thinks-more-than-it-knows-three-marketing-missteps-to-avoid/#497061751c57(Forbes 2020/04/15)

What do consumers think about artificial intelligence?
https://www.smartbrief.com/original/2020/04/what-do-consumers-think-about-artificial-intelligence
(SmartBrief 2020/04/15)