ワシントン大学などによるCNNを利用した新しい効率的な天気予測モデルを紹介!

ワシントン大学などによるCNNを利用した新しい効率的な天気予測モデルを紹介!

はじめに
 現在の気象予測は、天候に関係する多くの物理法則をもとにした複雑な方程式を解くことで得られた結果をもとに行われています。そのため、計算コストが大変大きく、精度を上げようとすると、予報として意味ある速度を維持することが難しいという問題がありました。(例えば、1週間後の天気を2週間かけて予測して高い精度をだしたとしても、意味はありません。)
 今回、新たにワシントン大学とMicrosoftReserchによって提案されたモデルは物理法則から計算するのではなく、過去の傾向から将来の天気を予測する方法をとることで計算コストを下げることに成功しました。このことで、予測速度を大きく向上させ、多種多様なモデルによるアンサンブル学習を行うことが可能となり、様々な天候の変化にも対応できることが期待されています。

●ワシントン大学公式HP(2020/12/15)
https://www.washington.edu/news/2020/12/15/a-i-model-shows-promise-to-generate-faster-more-accurate-weather-forecasts/
●論文『Improving Data‐Driven Global Weather Prediction Using Deep Convolutional Neural Networks on a Cubed Sphere』
https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2020MS002109

現状の課題

従来の天気予測システムは、最も強力なコンピューターを使って物理法則に関する何百万もの計算を通して天気を予測しています。天気予測として必要な予測スピードを満たしたうえで、精度を求めた場合、最新のコンピューターを利用した場合でも、かなりの計算労力を要します。そのため、より計算コストの低い手法が求められていました。

今回の手法

今回の手法では、従来のような物理学的計算ではなく、気象予測をパターン認識と考え、過去40年分の天気データをAIに学習・分析をさせることで、未来の天気を予想させました。パターン認識に強みがある機械学習の利点を最大限生かす形で、精度と計算速度を向上させました。
 研究チームはまず地球を立方体として見立て、6つの側面として展開し、二次元情報に変更・データ化しました。(なお、同チームは天気予想の精度を上げるため、天気において独特な役割を果たす極地は別の方法で扱っています。)二次元情報となった気象データを利用して、CNNを利用したモデルから予測します。
 

成果

今回の手法は、従来の方法よりやや精度は落ちるものの、7000分の1の計算労力で天気を予測できるため、従来よりもかなり速いスピードでの予測が可能になりました。そのため、従来と同様の計算資源であれば、非常に多くのモデルで予測することが可能となり、ハリケーンなど、動きに様々な可能性のある天気をより正確に予測することができます。論文の著者Weynは、AIのアルゴリズムでは、物理学的計算では導けない、タイプが異なる変数の関係性を見出すことができるとしています。
 実際に、モデルは天気用法の標準である500ヘクトパスカルの地点で年間12時間ごとに予測する方法でテストされました。また、3日間の予測用に開発され、現在新たに提唱されているデータ駆動型のベンチマークテストWeeatherBenchでは、今回のモデルがSoATモデルの一つであることが確認されています。

今後の展望・まとめ

今回のAIを使った手法は、精度においては従来の天気予測システムには劣りますが、そのスピードと効率性の良さから、代替手法の一つになりえることが示されました。今後既存の運用モデルと競合するためには、より詳細な情報が必要になることが指摘されています。

●Paper Reference
Jonathan A. Weyn, Dale R. Durran, Rich Caruana. Improving Data‐Driven Global Weather Prediction Using Deep Convolutional Neural Networks on a Cubed Sphere. Journal of Advances in Modeling Earth Systems, 2020; 12 (9) DOI: 10.1029/2020MS002109