AI教師を受け入れる生徒の意識に関する調査研究を紹介!

AI教師を受け入れる生徒の意識に関する調査研究を紹介!

はじめに
 教育のなかにも新たに開発されたテクノロジーを導入する動きが活発になっています。オンライン教育などはすでに多くの人に馴染みがあるものになってきているのではないでしょうか。その流れのなかにAIを用いた教育というのがでてきています。今回のご紹介する研究ではいわゆるAIを用いたティーチングアシスタントに関する意識調査です。今回の調査を通してAIティーチングアシスタントが普及するために必要な学生側の意識が明らかになりました。

概要

 セントラルフロリダ大学( the University of Central Florida:UFC)の研究チームは、最近導入がすこしずつ進んでいるAIティーチングアシスタントに対する学生の認識を調査しました。これまで、実装されたAIティーチングアシスタントを学生がどのように受け入れているのか、またその有用性をきちんと調査したものはほとんどなく、実態がわかっていませんでした。
 今回の調査によって、AIティーチングアシスタントの有用性に対する認識と、AIティーチングアシスタントとのコミュニケーションの容易さに対する認識が、AIティーチングアシスタントを利用する教育において鍵になることが明らかになりました。調査結果は、AIティーチングアシスタントの利用をサポートするものになっています。

論文
My Teacher Is a Machine: Understanding Students’ Perceptions of AI Teaching Assistants in Online Education
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10447318.2020.1801227

論文詳細

研究背景

 これまでも教育分野では様々な技術が導入されてきました。例えば、黒板からホワイトボードになり、現在では液晶画面へと変化してきました。
 そうしたなかで、たとえばインターネットの発達とともにオンライン教育も拡張されてきました。オンライン教育の有用性自体は現在でも疑問が呈されている領域ですが、一方で多くの教育機関でオンライン教育が推進され拡大してきたという歴史もあります。そうしたなかで、オンライン教育に関する研究も蓄積してきました。有力な研究では、教師と生徒が良好な関係を維持することが、生徒の学習パフォーマンスを向上させ、生徒間のコミュニティ意識を構築することがわかっているため、社会的存在と自己開示の重要性に焦点を当てています。特に、教師の強い社会的存在は、オンラインクラスでより前向きな学習体験を促進することがわかっています。オンライン教育の文脈における教師の基本情報に関する自己開示の効果は、従来の対面教育の文脈における効果よりも重要であることがわかりました。
 ほかにも、ソーシャルロボットを教育に取り入れる分野も発展してきました。ロボットを利用した教育もオンライン教育同様、その有用性が疑問視されている領域ですが、同時に研究もすすんでいます。そのなかでロボットにたいする共感と関与のふたつが効果的な学習において重要な因子であることが指摘されています。
 こうした背景のもと、オンライン教育との親和性が高く近年導入が進んでいるAI教師も同様に有用性に対する懸念が示されており、今回の調査に至りました。

調査概要

 教師は、知識の習得、発達、美徳の形成を通じて、感情的、認知的、行動的学習を改善するように他の人を励まし、力を与える人として理解することができます。これらの2つの概念に基づいて、AI教師は、人間との対話中にさまざまな方法で感情的、認知的、行動的学習に従事するのを助ける上で意味のある役割を果たすテクノロジーとして広く理解できます。AI教師がこのような役割を果たすものと認識されているのかがひとつの問題となります。
 今回の調査・研究では、テクノロジーアクセプタンスモデル(TAM)を仮説として採用されています。TAMは、テクノロジーの採用は、特定のテクノロジーを使用する個人の行動意図によって影響を受けると想定するものです。TAMの鍵は、個人の認識された有用性と認識されたテクノロジーの使いやすさの両方にあります。

 米国の大規模な公立大学のコミュニケーションコースを受けた学部生に対するアンケートをもとに調査されました。アンケートでは、新しいテクノロジーに対する受講者の受容度(AIが人間の仕事を代替することをどうおもうかなど)と、AIティーチングアシスタントに関する認識を測る質問が行われました。

結果

 主な調査結果は、AIティーチングアシスタントの有用性とAIティーチングアシスタントとのコミュニケーションの容易さの認識が、AIティーチングアシスタントの使用に対する好ましい態度を積極的に予測し、その結果、AIティーチングアシスタントベースの教育を採用する意欲が高まることを示しています。(TAM理論が正しいことの証明)さらに、この研究は、知覚された有用性とコミュニケーションの容易さが、AIティーチングアシスタントベースの教育を採用する意図を直接予測することを明らかにしています。