はじめに
人間の視覚学習を研究している米MITやジョージタウンの共同神経学研究チームが、より高速に新しい視覚概念を学習させる方法を人間の知性に基づいて提案しました。
Tweaking AI Software to Function Like a Human Brain Improves Computer’s Learning Ability
https://gumc.georgetown.edu/news-release/tweaking-ai-software-to-function-like-a-human-brain-improves-computers-learning-ability/#
論文
Leveraging Prior Concept Learning Improves Generalization From Few Examples in Computational Models of Human Object Recognition
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fncom.2020.586671/full
概要
これまで機械学習では大量の教師データが必要であるのに対して、人間は新規の概念に関して少数のデータでよいことから、機械学習でも人間のように少ない枚数での効率的な学習が可能なのではないかと指摘されてきました。今回、人間の視覚学習を研究している神経学研究チームが、より高速に新しい視覚概念を学習させる方法を人間の知性に基づいて提案しました。
方法
少数の例から効率的に新しい概念を学習する生物学的にもっともらしい方法として、形や色といった低レベルかつ中間情報を利用して個々の物体を利用する旧来のモデルではなく、すべての視覚概念間の関係性を学習するようにデザインすることを研究チームは提案しています。これは、オブジェクトに関する概念に満ちたデータバンクから以前に学習した表現を活用することで、脳の階層の計算能力はより学習を簡素化できることに基づいています。
人間の視覚概念学習の基礎となる脳アーキテクチャは、オブジェクト認識に関与するニューラルネットワーク上に構築されています。脳の前側頭葉には、形を超えた「抽象的な」概念表現が含まれていると考えられています。視覚認識のためのこれらの複雑な神経階層は、人間が新しいタスクを学習することを可能にし、そのうえで以前の学習を活用することを可能にします。
なお新しい視覚カテゴリをすばやく習得する脳の能力は、すでに習得している視覚カテゴリのバンクのサイズと範囲に依存する可能性があります。実際、高速マッピングを実行する脳の能力は、新しい知識をATLの既存のスキーマに関連付ける能力に依存する可能性があると考えられています。視覚刺激をカテゴリに分類するこの能力は、他の多くの視覚能力の根底にある重要なスキルです。特に、広く調整された概念表現を使用して、わずか2つの肯定的な例から視覚的な概念を学習し、概念の肯定的な例とさまざまな否定的な例を正確に区別できることがわかりました。視覚的階層の初期の視覚的表現では、同等のレベルのパフォーマンスに到達するために、かなり多くの例が必要です。
実験
GoogLeNetを利用して概念レベルの表現を学習した後、追加で新たな概念を学習させると効率よく学習できることがわかりました。このときの効率よい学習とは、学習データを少なくすることができたことを意味します。
まとめ
どれだけ効率よく学習できるのかは常に重要なテーマであり、特に人間を理解することで得られる効率化はAIのパフォーマンスを上げるだけではなく、人間とはなにかという理解にもつながります。AIの理解を通して、人間の理解が深まることも期待されます。