米カンザス大学によるAIへの信頼感と人間関係に関する最新の研究を紹介!

米カンザス大学によるAIへの信頼感と人間関係に関する最新の研究を紹介!

はじめに
 カンザス大学の研究チームが、人々のAIに対する信頼度はその人の人間関係と強い関係性があることを明らかにしました。AIの社会への導入に対する新しいアプローチが可能になることが期待されています。

論文『Attachment and trust in artificial intelligence
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S074756322030354X

論文概要

●前提

 現在、AIの市場は拡大の一途をたどっていますが同時に、人々のAIに対する信頼感の欠如がAI関連のテクノロジーが拡大していくことの主要な障害とされています。そのため現在ではいかに「AIに対する信頼感を向上させるか」、「先験的な不安を軽減させるか」というのが主要な研究項目のひとつとされています。これまでの多くの研究ではAIに対する認識の側面から信頼度を向上させようとしていました。今回のカンザス大学の研究では、人々が人間に抱く「信頼」という側面からAIへの信頼を考えることで、新たなアプローチの可能性を提起しています。

●アプローチ

 今回のカンザス大学の研究では、認知面に直接取り組むのではなく、「関係性の感情面(relational affective)」からAIの信頼性を向上させることに注目しています。これはAIをデバイスとして考えるというよりも、パートナーやチームメンバーとしてみなすことで可能になったといいます。こうした新たな視点からの研究が可能になった背景には、カンザス大学の研究チームが学際的であったことがあるとチームは語っています。チームには、心理学、工学、ビジネス、医学など、幅広い分野の研究者が含まれていました。この学際的なアプローチが、人工知能、信頼、および関係的および感情的な要因との関連に関する新しい視点・手法を提供しました。

●結果

 研究チームは、人間関係に不安を抱えている人は同様にAIに対しても信頼を置かないことを明らかにしました。更にそうした人々に対して信頼のおける人間関係を想起させることが、AIに対しての信頼度も向上させることがわかりました。人間関係のほかに、愛情スタイル(Attachment style)、親子関係が強い相関関係を持っていることが指摘されています。
 これらの研究結果から、新しい技術の導入を円滑に行う方法や、導入に対する人々の反応などを構築されている人間関係から予測し対応するなどの応用が期待されています。

Reference
Omri Gillath, Ting Ai, Michael Branicky, Shawn Keshmiri, Rob Davison, Ryan Spaulding. Attachment and Trust in Artificial Intelligence. Computers in Human Behavior, 2020; 106607 DOI: 10.1016/j.chb.2020.106607