医療・生物学にDeep learningを応用した「ACME」  特性細胞の解析時間が大幅に削減!

医療・生物学にDeep learningを応用した「ACME」  特性細胞の解析時間が大幅に削減!

マドリード・カルロス3世大学(スペイン語: Universidad Carlos III de Madrid:以下、UC3M )の研究者によって、顕微鏡で捕捉した細胞の動きを自動的に解析し、特徴を付ける ACME ( Automatic Cell migration examination )が開発されました。

概要

UC3M のエンジニアリングチームが開発した ACMEは国立循環器病研究センター(CNIC)の生体組織の測定に使用されました。その結果、好中球(免疫細胞の一種)が炎症過程で血液中でさまざまな挙動を示すことを発見し、そのうちのひとつである Fgr 分子(チロシンキナーゼ遺伝子ファミリーメンバー特有な癌原遺伝子)が心血管疾患の発症に関係することを突き止めました

 

この図は今回開発されたシステムと ACME ソフトウェアを基に好中球を分類したものです。左の図の緑色は血管、赤色は好中球を表しています。右の図はそれぞれの好中球に1色付けしたものです。

これらの発見は心臓発作の影響を最小限に抑える新しい治療法の開発を可能にする可能性があり、研究には科学研究の奨励、促進、およびサポートを行っている団体 Vithas Foundation 、西班牙のカスティーリャ・ラ・マンチャ大学、シンガポール科学技術研究庁(ASTAR)、米国のハーバード大学などの研究者が参加しています。

技術について

新規性

従来の研究では専門の学者が何か月もの時間をかけて細胞の動きを追い続けるものでしたが、ACMEでは 5分の映像の分析に15分しかかかりません。ACMEはコンピュータビジョン技術に基づく全自動システムの設計と開発で構成され、生体内顕微鏡技術を用いて撮影したビデオを分析することによって細胞に特徴付けることを可能にしました。

また、数千個の細胞の血管に対する形状、大きさ、動き、位置の自動測定は、通常、数百の手動による特性細胞を分析によって行う従来の生物学的研究と比較して行われ、より高度な生物学的解析により統計的有意性の高い方法で行うことが可能になりました。

さらに、このシステムには他の種類の統計的手法や幾何学的モデルも組み込まれており、これらは Medical Image Analysis 誌に掲載された別の論文に記載されています。

課題

細胞のセグメンテーションと検出に用いているディープニューラルネットワークは、基本的にデータから学習するアルゴリズムであるため、新しいコンテキストでシステムを展開するためには、学習させるために十分なデータを用意する必要があります。

今後の研究方針

ACME は汎用性があり、研究チームはがん組織における T細胞の樹状細胞の免疫学的挙動も研究しています。この分野の研究では、研究者は学際的なチームワークの重要性を強調しており、生物学者、数学者、技術者が他の学問分野の基本概念を理解するために、事前にコミュニケーションを図ることが重要であると言えます。

まとめ

ACME による解析時間の大幅な短縮、汎用性の高さにより研究や医療現場においての発展に大きな期待が見込まれます。

論文タイトル:ACME: Automatic feature extraction for cell migration examination through intravital microscopy imaging
URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1361841522000111?via%3Dihub,ScienceDirect,2022.