文系学部生のE資格合格体験記(2023#1)

文系学部生のE資格合格体験記(2023#1)

 株式会社 Present Square にインターン生として勤務しております木村です。2023年2月19日に実施された JDLA 主催 Deep Learning for Engineer 2023#1を受験し、合格しましたので、受験動機や勉強法、試験について記載します。
 E資格に合格した後、Present Squareからインターン生として採用して頂くことができたため、その経緯も併せて紹介させて頂きます。

1.受験動機

 私が在籍している大学では、1年生から3年生までの3年間でAIについて学ぶゼミが開講されており、そのゼミを履修したことがAI分野を知るきっかけになりました。ゼミ受講以前はAIがどのような仕組みでできているのか全く知りませんでした。しかし講義を受講していくなかで、既存の課題を解決し、性能を向上させるために開発されたCNNやRNNなどのモデルやアルゴリズムの数々について学ぶことができ、それらの工夫について魅了されました。
 更に学習を進めたいという思いや、ゼミの学習の一環として推奨されていたこともあり、G検定を受験しました。G検定には合格したものの、学んでいくなかでプログラミングや数学の勉強を自主的に進めていくのは難しいと感じ、それ以上自主的に勉強を進めることは諦めてしまいました。
 G検定に合格した翌年、学生が中心に運営するプログラミング学習コミュニティの存在を知り、「教えてくれる人がいるならプログラミングに挑戦できるかもしれない」と思い入会を決め、そこでiphoneアプリの開発を行いました。最初は作ったアプリが就職活動のアピールポイントになればいいなという軽い気持ちで入会したのですが、そこで初めてプログラミングに触れ、コーディングしてプロダクトを作って課題解決をする楽しさを知りました。この経験からエンジニアとして将来活躍したいと思うようになり、開発したいものを探す中で、もう一度AIの分野に挑戦してみようと思いました。
 しかし、画像認識や自然言語処理などのAIの関わるさまざまな領域の中から自分が携わりたい領域を決めるためには、G検定レベルの知識では足りないと感じました。また、ゼミの教授に受験を勧められたこともあり、AIについてG検定より幅広い領域から一層深い知識が問われるE資格の受験を決めました。

2.バックグラウンド

文系学部生

 大学ではこころの悩みや病気、障害などを抱えた人を支援するための臨床心理学を専攻しています。心理学の研究に必要な統計については大学の講義を受講していたものの、大学の学習範囲の微分積分や線形代数はもちろんのこと高校の理系数学さえほとんど理解していない状況でした。

python開発経験なし

 上述の通りiphoneアプリの開発でpython 以外のプログラミング言語には少し触れたことがあったものの、pythonを使ったモデル開発は後述する認定プログラムの修了課題が初めてでした。

G検定取得済み

 G検定に合格すると上述の大学のゼミの成績に加点があったため受験を決め、合格していました。

3.認定プログラム

 E資格の受検資格を得るためには JDLA の認定プログラムを受講する必要があります。受験を検討した当時は、Present Square でインターンとして勤務していませんでしたが、数ある認定プログラムの中から、Present Square が提供する DeepSquare の「AIエンジニア育成講座(E資格対応)」を受講することに決めました。文系かつ開発未経験の自分でも講義についていけるかどうかが一番の心配だったため、決め手となったのは「未経験者を全力サポート」という特徴が挙げられていたことでした。また、「G検定合格割引」や「学生割引」などの制度が充実していたことも決定を後押ししてくれました。

4.勉強内容と期間

2022年6月〜8月

 認定プログラムの講座の受講を進めていました。G検定に比べ、試験範囲や情報量の多さに圧倒されていましたが、講義や講義資料がとても丁寧だったので全く理解できないということはなく、時間をかけて勉強を重ねれば合格できるのではないかという自信に繋がりました。実装課題についてはネットで調べながらどうにか合格ラインに達し、認定プログラムの修了認定最終締め切り日に滑り込みで講座を修了することができました。

2022年9月〜12月

 6月から講座を受け始めたのは、あわよくば8月末の試験(2022#2)に間に合わないかと思っていたからでした。そのためには8月の上旬には講座の修了申請をしないといけないことは理解していたのですが、講座内の実装課題の難易度に対する自分の認識が甘く8月上旬に講座を修了することができませんでした。講座提供期間内までには修了出来たため、試験資格の取得は出来ましたが、次の試験がある翌年の2月まで少し時間が空くことになりました。
 そこで統計検定の受験をしようと決意し、9月末に2級を、12月末に準1級を取得しました。E資格取得には遠回りなのではないかとも思ったのですが、結果的には弱点だと感じていた微分積分や線形代数にかなり触れることができ、ベイズ統計など機械学習との親和性が高い分野の学習もできたため、受験して良かったと感じています。

2023年1月〜受験日

 本格的にE資格の勉強をしたのはこの1ヶ月半になります。認定プログラムの講義資料を勉強の中心に据え、単元ごとに
1.書籍やネット上の記事で大まかな流れを理解する
2.講義資料を読んで書籍で学んだ内容を復習する
3.インプレスから出版されているE資格の問題集を解く
4.問題集で正答できなかった部分を中心に講義資料を読み直す
という形で勉強を進めていきました。問題集は最初はあまり正答できませんでしたが、4周ほど解いて8〜9割正答できるようになりました。

参考になった書籍など

『ゼロから作るDeep Learning』シリーズや、『生成Deep Learning』は特に読んで良かったと感じました。また、隙間時間を活用して『Alcia Solid Project』さんというYoutubeチャンネルの Deep Learning の動画を視聴していました。書籍での理解が難しいと感じた内容もわかりやすく解説されていて、強くおすすめできます。

 逆に挫折してしまった書籍もあったので、挫折してしまった理由も併せて簡単に紹介します。これらの書籍を読むことはあくまでE資格合格には少し遠回りだと感じましたが、開発に携わるための勉強にはとても良い書籍だと感じたので、改めてじっくり最後まで読もうと思っています。

『深層学習』
 JDLAが「深層学習の定番教材として位置付けられている書籍」と推薦図書に挙げているほどの本です。しかし、数式ベースで書かれていてここまでの理解はE資格合格には不要だろうと思ったこと、600ページほどの分量があり読むのが辛くなってしまったことから、読むのを諦めてしまいました。最初の数章と問題集で多く誤答してしまったオートエンコーダの章だけ読みました。

『Pytorch実践入門』
 Pytorchを用いた開発の方法を詳しく学ぶために読み始めました。初めの2章から3章ほど読んだあたりで、これ以上細かな内容はE資格の問題を解くのには不要だと判断し、読むのを止めました。

『Pytorchによる物体検出』
 物体検出の範囲の理解に乏しく、Pytorchも併せて勉強できれば一石二鳥なのではと思い読み始めたのですが、理論に詳しい本というよりも、手を動かして書籍通り実装するための本である印象を受け、ほとんど読まずに終わってしまいました。

 書籍だけでは試験範囲を全て網羅することが難しいと感じていたので、メインの教材は講義資料で、書籍はあくまで講義資料の補完、というスタンスで勉強を進めていたことが合格に繋がったと思います。講義資料には出題範囲が不足なく掲載されていて、自分がどの単元の勉強が足りないのかを常に確認しながら勉強することができました。試験範囲が広いこともあり、とにかく問題を解いて、わからなかった部分のインプットを進めるといったアウトプット中心の勉強ができたことも良かったです。

5.試験本番の感想・得点率

 試験当日の会場への移動の電車内では、講義資料を読み直したり、理解が甘かった XAI の分野のネットの記事を読んだりしていました。試験本番の感想としては、試験範囲内から均等に出題されかなり動揺しました。画像認識や自然言語処理、強化学習といった内容が出題の多くを占めると勝手に予想していて多くの勉強時間を割いたのですが、距離学習やメタ学習など、十分勉強できなかった分野からも多く出題がありました。ほとんど正答できていないと思います。というのも、公式例題が認定プログラムの講座のサイトから入手できるようなのですが、講座提供期間内にダウンロードすることを失念しており、解くことができませんでした。利用可能な教材等は、講座提供期間内に全てダウンロードしておくとよいと思います。この記事の執筆中に公式例題を初めて見ましたが、本番の試験問題とかなり似ていると感じましたので、解いておくことをおすすめします。私も公式例題を解いていれば試験中そこまで動揺することはなかったと思います。公式例題からは読み取りにくいですが、試験問題の問題文のコードはほぼ全てPytorch(Tensorflow)で記述されていました。
 基本的には選択問題ですので、しっかりと問題文と選択肢を読み込めば選択肢を絞り込める問題も少ないという印象でした。CBT方式の受験には統計検定で慣れていたこともあり、試験時間が足りないとはあまり感じませんでした。見直しも十分にできて5分ほど時間が余ったと記憶しています。
 分野別の得点率は、深層学習が6割程、そのほかの分野が全て7割強でした。応用数学や機械学習の分野は得点率9割を目指して勉強していたため目標には達することができませんでしたが、得点率が1番低かった深層学習も合格ラインと言われている6割を超えていたことは嬉しかったです。

6. インターン生になるまでの経緯

 E資格に合格したら、学んできた知識を活かしてインターン生として働きたいと考えていたため、合格した後すぐに長期インターンへの応募を始めました。 Present Square が長期インターン生を募集していることは、E資格の認定プログラムを探していた時にwebページを見て知っていました。大学のゼミでこの分野に出会えたおかげで、今この分野に熱中できています。今度は自分が誰かをこの分野に熱中させる側に立ちたいと思い、AI教育に力を入れている Present Square に応募しました。E資格に合格したことが採用して頂けたことに繋がったと思っています。

7. 最後に

 E資格の受験を通して、たとえ自分のように文系の学生であっても、1つずつ勉強を積み重ねていければこの分野で活躍できるはずだという自信に繋がりました。 ChatGPT の登場など、AIの分野はものすごいスピードで進化を続けていると強く感じています。資格取得で満足することなく、学び続けていく姿勢を忘れないようにしたいです。