生成AIをビジネスで活用する上で、検索拡張生成(RAG:Retrieval-Augmented Generation)は欠かせないものになってます。生成AIに外部知識の「検索→統合→生成」という流れを組み込むこの技術は、ビジネス現場での活用が大きく広がっています。
特に2024年の後半からは、検索拡張生成は「単なる情報検索+生成」を超え、より高度な意思決定支援や知識統合、業務効率化を実現する方向へと大きく進化しています。本記事では、最新RAG手法の中から、ビジネスインパクトが大きい3つの手法を厳選してご紹介します。
検索拡張生成(RAG)とは?
検索拡張生成(RAG)は、AIによる回答や説明文の生成プロセスに外部情報の検索・取得を組み込む技術です。AIは自身の学習済み知識だけでなく、社内外のデータベースやWeb情報、各種ドキュメントなど最新・専門的な情報をリアルタイムで参照しながら高精度なアウトプットを生成します。従来型AIが抱えていた「情報が古い」「専門性が限定的」という課題を根本から解決し、より根拠に基づいた信頼性の高い情報提供を実現します。
1. PlanRAG:戦略的検索で意思決定を高度化
基本概念
PlanRAGは「Plan-then-Retrieve Augmented Generation」の略で、AIが最初に計画(戦略)を立て、その計画に基づいて必要な情報を検索・収集し、最終回答を生成するという特徴的な流れを持ちます。従来の検索拡張生成が「質問を受けて即検索→回答」だったのに対し、PlanRAGでは間に「計画立案」のステップを加えることで、より複雑な意思決定や多段階の推論が求められる業務で効果を発揮します。
PlanRAGの処理フロー
- 1.クエリ理解・戦略計画:ユーザーの質問を分析し、どのような情報が必要か・どの順序で収集すべきか計画を立案
- 2.ツール活用・情報収集:計画に沿ってデータベースやAPIから情報を的確に取得
- 3.推論・意思決定最適化:集めた情報を統合・分析し、最適な回答や判断材料を生成
2. MemoRAG:グローバルメモリーによる知識拡張
基本概念
MemoRAGは、長大な文書や複数のデータベース全体を効率的に処理する「グローバルメモリー」方式を採用した検索拡張生成の進化形です。「メモリーモジュール」と「生成モジュール」の2つのAIが連携し、膨大な情報の集約・要約と高品質な回答生成を実現します。
MemoRAGの特徴
- 1.デュアルAIシステム:「メモリーモジュール」が大量文書から重要情報を要約・抽出、「生成モジュール」がそれを活用し回答生成
- 2.プログレッシブメモリー:段階的に情報を集約・深化、複雑な内容でも徐々に理解を高める
- 3.検索クルー活用:生成した答えの下書きを次の検索に活用、循環的な精度向上
MemoRAGは複数サイクルで情報を収集・統合するため、特に複雑・曖昧な質問や複数文書にまたがる知識統合が必要なケースで力を発揮します。
3. CAG:キャッシュ駆動型で超高速応答を実現
基本概念
CAG(Cache-Augmented Generation)は、リアルタイム検索を排除し、事前構築した「キャッシュ」を直接参照するという新しい発想の検索拡張生成です。クエリごとに都度検索するのではなく、あらかじめ作成した知識キャッシュを活用することで、応答速度と一貫性を大幅に高めます。
CAGの処理フロー:
- 1.External Knowledge Preloading:知識ベースから「キー・バリューキャッシュ」を事前構築
- 2.Inference:クエリに対して検索ではなくキャッシュを直接参照し回答を生成
- 3.Cache Reset:必要に応じてキャッシュを更新・再構築
CAGは、特に限定的な知識ドメインでの高速応答や、複数ターン対話での一貫性維持に最適。システム設計もシンプルで運用コストも削減できます。
まとめ
2024年後半からの検索拡張生成(RAG)は、単なる「検索+生成」からさらに進化し、戦略的・効率的・高速な情報活用を可能にしています。
- PlanRAG:戦略的な計画立案と情報収集で複雑な意思決定をサポート
- MemoRAG:グローバルメモリーによる段階的情報集約で深い洞察を提供
- CAG:キャッシュ型の超高速処理で定型業務の効率を劇的に改善
これらの先進的な検索拡張生成手法は、各業界・業務課題にあわせて柔軟に活用できます。自社のビジネスプロセス革新にぜひ役立ててください。