AIを用いた新たなタンパク質の細胞内位置の予測研究を紹介!

AIを用いた新たなタンパク質の細胞内位置の予測研究を紹介!

はじめに
 奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の研究チームは、機械学習を用いて特定のタンパク質の細胞内位置を予測できることを発見しました。今後、AIによってタンパク質の局在化の新たな特徴の発見が期待されています。

奈良先端科学技術大学院大学公式HP(2021/08/06)
AI knows where your proteins go
http://www.naist.jp/en/research_achievements/2021/08/008183.html
論文
Translation of Cellular Protein Localization Using Convolutional Networks
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fevo.2020.530135/full

背景

 機械学習は、細胞画像を含む生物医学画像をセグメント化するなど生物医学分野を含む様々な分野で大きな成功を収めています。一方で、細胞内のタンパク質の局在は間接免疫蛍光抗体法と蛍光標識によって分析されています。しかし、異なるタンパク質の局在は人工知能を用いて分析されたことはありませんでした。

論文概要

 アクチンは、球形のタンパク質であり細胞に形と構造を支持する重要な役割を果たします。細胞が前方に「歩く」ために使用する膜状仮足(Lamellipodia)の形成を助ける役割も持っています。
奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の研究チームは、畳み込みニュートラルネットワーク(画像データを入力してより精度の高い認識を達成するモデル・手法)を用いて、このタンパク質アクチンとの関係に基づいて細胞内のどこに目的のタンパク質が存在するかを決定できる機械学習アルゴリズムを設計しました。
 今回、研究チームは標識されたタンパク質の画像データを与え続けることで関連するタンパク質を予測することを狙いとしました。まず、細胞内でのタンパク質がどこにあるかを示すために蛍光マーカーで標識された画像を与え訓練します。そして重要な役割を持つアクチンだけを標識したプログラムの画像を与えます。次にAIがアクチンに関連するタンパク質の画像と直接的に関連性がないタンパク質の画像を予測し変換した画像を出力します。最後に、実際の画像と比較し類似性を検証しました。
 変換された画像と実際の画像との違いは、タンパク質同士の機能がどれだけ独立しているかなど様々な考えがあり、判明するためにさらなる調査とそれらの画像の特徴を評価できる統計の開発が必要になると提案しています。

 

膜状仮足でのアクチンの構成と目的のタンパク質(WAVE2)の局在の概略図。(上記論文より引用)

結果

 アクチンと関連性の高いタンパク質は類似性が高いことが分かりました。また、アクチンとは関連性の低いタンパク質は正確に予測されていませんでした。しかし、これはアクチンとの間接的なつながりを示している可能性でもあります。
 専門家でなければ見つけることが容易ではない膜状仮足というタンパク質アクチンの突起をAIを用いて見つけることが可能になり、将来的に細胞画像から膜状仮足などの構造を迅速かつ正確に識別するために使用できます。また、物理的関係を説明できることから、一種の細胞染色法としても使用できる可能性があります。