日本の伝統的な絵画のモチーフを判定するAIサービス 「Beyond Scrolls & Screens」を紹介!

日本の伝統的な絵画のモチーフを判定するAIサービス 「Beyond Scrolls & Screens」を紹介!

 Googleは、「Experiments with Google」という人工知能(AI)など最新技術を活用した実験的な応用例を紹介するサービスを提供しています。その中で、対象の日本画が何をモチーフに描かれているのかをAIが判定する「Beyond Scrolls & Screens」というサービスが追加されましたので、今回は、こちらのサービスについて紹介していきます。

概要

Beyond Scrolls & Screens
https://artsexperiments.withgoogle.com/beyondscrolls/




 「Beyond Scrolls & Screens」は、源氏物語絵巻物や観楓屏風など、日本に古くから伝わる絵画が何をモチーフに描かれているかを判断してくれるサービスです。閲覧したい絵画をクリックすると、その絵画の物体が何であるかを表示してくれます。作品内に描かれたかなり細かいモチーフであってもカーソルを当てれば分析が可能な場合も多いです。

体験レビュー

 こちらのサービスを実際に体験しました。サイトに設定されたデフォルトの言語は英語ですが、日本語への翻訳も可能なため英語が不安なユーザーも安心して楽しめる設計になっていました。
 詳細を閲覧したい絵画をクリックすると「橋!」「木!」などの吹き出しが白黒で表示されます。早速、絵画内の人物にカーソルを合わせると「人!」と表示されました。その人物を拡大すると更に「帽子!」や「服!」という吹き出しが現れました。別の作品で人物にカーソルを合わせると「女!」と表示されましたが、その時代に一般的であった女性の髪型や衣装から性別を判断しているようです。




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 また別の絵画内の人物を拡大表示すると、人物の隣にある鍋は「台所用品!」とより詳細に判別されました。簾は「窓!」、「戸!」もしくは「家!」と判別されました。



 作品に描かれている犬や猫、牛、そして怪物までもが「動物!」と表示されましたが、鶴や雉などの鳥だけは「鳥!」と正確に判断されていました。人間では性別や衣装の判別もでき、鍋は「台所用品」という結論が出せましたが、家屋に関わるアイテムや動物の分析はもう一歩のように感じました。

 こうした判別は、物体検出、又はセグメンテーションによって実現できているものと考えられます。具体的には、一つの絵画を人物、動物、家屋、道具などといった領域を分割しているものと思われます。人物については男性と女性、人物の衣装については帽子や服、などと細分化された教師ラベルを用意し、学習を行っているのではないかということが想定されます。鳥が「動物!」ではなく「鳥!」という判定が表示されたのは、その特殊な形状が動物の中でも更に細かい一つのカテゴリの生物として分類しやすいことが理由だと考えられます。
 理解しやすい特徴を持つモチーフは細分化しやすいことが想定されるため、松の木にカーソルを合わせると今は「木!」としか表示されませんが、以降学習を重ねることにより「松!」と判別できるようになることに期待が持てます。現状ではサイトで紹介されている絵画は6点ですが、今後点数が増えることも十分に有り得ると思われます。

期待できること

 現状、家屋に関わるアイテムや動物の分析はもう一歩のようですが、多くの作品を今後学習していくにつれ、更に詳細な判別ができるようになると思われます。そのことにより、今まで学者たちも判別できなかったモチーフをこのサービスが判別できるようになる日も近いのではないだろうかと思われます。また、AIが多数の作品を学習していくことによって、人間では持ち得なかった着眼点からモチーフを判別しうることにも希望が抱けました。
 現状では古き日本画の解析のみですが、学習を積むにつれ海外の伝統的な絵画、そして現代の絵画の分析もできるようになることに筆者は期待を抱きました。もし、そのようなことができるようになれば、芸術を深く学ばなくては理解できなかったその作品に込められたメッセージを私たち一般の人も容易に理解できる日が来るかもしれませんね。