はじめに
米ヒューストン大学生体工学部門が全身性硬化症を標準のラップトップコンピュータで高速に診断できる新たなディープニューラルネットワークアーキテクチャを発表しました。
Screening for Skin Disease on Your Laptop – University of Houston
https://uh.edu/news-events/stories/2021/april-2021/04062021-metin-akay-articial-neural-network-systemic-sclerosis.php
〇論文
Deep Learning Classification of Systemic Sclerosis Skin using the MobileNetV2 Model
https://ieeexplore.ieee.org/document/9380371
概要
米ヒューストン大学生体工学部門が全身性硬化症の診断を高速化する新たなディープニューラルネットワークアーキテクチャを発表しました。全身性硬化症は、皮膚および内臓の硬化または線維化を特徴とするまれな自己免疫性疾患です。標準的なラップトップコンピューター(2.5 GHz Intel Core i7)に実装されたネットワークは、健康な皮膚と全身性硬化症の皮膚の画像を即座に区別できます。
詳細
背景
早期診断を行うことができれば、早い段階から治療にあたることができ、回復する可能性が高くなります。しかし、早期診断と病気の進行の程度の決定は、専門家センターでさえ、医師にとって重大な課題をもたらし、治療と管理の遅れをもたらしていました。
機械学習を用いたアプローチも検討されてきましたが、利用可能なトレーニングセットとネットワークのサイズが原因で、生物医学アプリケーションでの成功は限られています。今回、提案されたネットワークアーキテクチャは、臨床現場で簡単に実装でき、SSc用のシンプルで安価で正確なスクリーニングツールを提供できることを目的としたものです。
実験
学習プロセスをスピードアップするために、軽量モデルとして代表的なMobileNetV2のパラメーターを使用してトレーニングされ、140万枚の画像を含むImageNetデータセットで事前学習されました。
分類は主に二値分類(病気かどうか)で行われました。追加実験として、3値分類(正常、早期症状、進行症状)が行われています。トレーニング時間は5時間未満で行われました。
実際に利用されたデータの一部
左図:正常、右図:全身性硬化症
左図:正常、中央:初期症状、右図:進行症状
結果
テスト画像セットで 、二値分類では94.8%の精度、3値分類では87.5%の精度が確認されました。
まとめ
医療分野での利用のネックになっていることにプライバシー保護やセキュリティ上の理由からエッジでの利用が好まれるのに対して、現場の一般的なパソコンで利用できるニューラルネットワークが存在していないという問題がありました。今回の研究は、一般的なラップトップパソコンでも利用できるようなモデルサイズでも十分な精度をだすことができたという点に意味があります。ただし、医療分野での利用は倫理的な問題や説明能力の問題など、精度の向上以外にも導入を阻む問題点は多く、今後より研究が進むことが求められます。